2011/08/12

【本】新医学教育学入門―教育者中心から学習者中心へ

タイトル通り医学教育の入門書です。 
”医学”という名前がついていますが、医学部・医師の教育に限らず、医療者教育に関わる人で医学教育学の理論を知りたいという人にとって、とてもいい入り口になる本だと思います。

私が、医学教育に興味を持つようになったきっかけの1つが、この本でした。著者の大西先生を学会で初めて直接お見かけしたときには、本当に感動したことを覚えています。 

薬剤師として働き始めてから、すぐに学生の実習に関わるようになり、3年たった頃には、自分の関係する部署の学生に指導する実習スケジュールを考えたり、直接、長期実習にきていた大学院生に指導をしたりしていました。 そして、当時、6年制の長期実務実習に向けて、学会などでさまざまな動きがありました。

実習を受け入れる施設に、認定実務実習指導薬剤師が1名は必要ということで、実習に関わる薬剤師は、実習指導の座学とワークショップを受けることになりました。 ところが、5年の経験が条件と言われていましたので、認定のためのワークショップに参加する順番が、回ってこず、コアカリや教育目標のことをあまり理解できていませんでした。

にも関わらず、実習に関することで学会発表をしていこうとしていたので、最低限の知識を押さえておく必要がありました。 そんなとき、ふと手にしたのが、「新医学教育学入門―教育者中心から学習者中心へ」でした。

とっつきにくい医学教育用語を物語仕立てで、わかりやすく解説してあります。 ありがちな間違いですが、私も、学生には正しい知識を教えなくては!と思っていました。ところが、読み進めていくうちに、そうではなくて、学生の自主性や動機付けが重要ということがわかってきました。 

当時、経験年数3年弱の私にとっては、目からウロコの話で、むしろ、とても気が楽になったことを覚えています。何も、私が知識を持っていなくても、学習者が勉強したいと思えるような環境(実習スケジュール)を考えればいいということに気づいたからです。 

学習者にとって、勉強になると思える実習は何か?私にとっては、答えはとても簡単なことでした。私も同じように大学院生のときに長期実務実習を経験していました。つまり、自分が受けたかった実習を考えればいいわけです。

それから、ワークショップに出ていなくても自信を持って実習スケジュールを考えたり、学会発表をしたりできるようになりました。実際、ワークショップへ参加したときには、知識としては、十分理解できるようになっており、本当にこの本のおかげだと思いました。 

今、読み返してみても、とても面白い内容です。本当に、この本に救われました。私にとってバイブルのような存在です。 ちなみに、物語形式での解説は、実は、前田さんとの本("よりよき医療コミュニケーションを求めて" (前田純子))の第2章で生かされています。



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