2012/06/29

【実務実習】実習指導における有効なフィードバック

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私の病院では、実習指導のために、ポートフォリオを用いています。Web上でポートフォリオを作成できるようになっており、学生は、毎日実習の記録、振り返りを行います。

つい先日、同じ学生を担当している後輩の薬剤師と話をしている中で、

「学生へコメントしてあげるときに、これとこれができていないとつい指摘してしまって冷たい感じになってしまうんですよね。もっと、いい感じのモチベーションあげられるようなコメントをしてあげたいんですが・・・」

というような話を聞きました。

実習指導の際、薬剤師は、学生ができていることは指摘せず、できていないことを指摘してしまいがちです。できていることよりも、できていないことのほうが気になってしまうんですよね。

自分のブログをさかのぼってみると【実務実習】学生は、ほめて育てる???という記事を、以前、書いていたようです。

ここにきて、実習指導におけるフィードバックについて再考してみました。

実習指導においてフィードバックでPNP(Positive Negative Positive)で伝えましょうという考え方があります。多くの場合、できたところ(Positive)を先に伝えると、改善点(Negative)に対して聞く耳もってくれるからという理由で指導で使ってくださいと言われます。

こういう話をされるとたいていの場合、昔は叱られてばかりだった、最近の若者は、精神的に弱いから、怒ったら駄目だ、褒めて育てないといけないのか、と言われる方がいらっしゃいます。

PositiveとNegativeの両方を伝える意味は、決してほめて育てようというものではないと、私は考えています。なぜ、できていることを伝える必要があるのかが重要です。

例えば、病棟での患者さんとのコミュニケーションを体験してもらったあと、私は必ず、良かったところと改善すべきところを伝えます。6年制になってOSCEでなんとなく、あいさつもできるし、話の流れもうまく上手に話せる学生が多いです。

ところが、学生からすると、当たり前ですが、薬剤師がしているのを見学しているときには簡単そうにみえた患者とのコミュニケーションも、実際にやってみると強烈にできなかったという印象になります。そこで大切なのは、できたことが何かをしっかり教えてあげることです。もちろん、こうしたらもっと良かったねという改善点も伝えます。

褒めて伸ばすというのは、少々できていなくても、ちやほやすというイメージですが、そうではなくて、できていること、できていないことをちゃんと指導者から伝えることが大切だと考えています。ちやほやしても、結局、その学生のためにはなりません。

学生にも、自分の行っていることをきちんと自己評価して、できるようになるには、どうしたらよいか、振り返りができるようになりなさいと話をしています。ほとんどの学生が、自己評価をしなさいというとできたことは挙げずにできなかったことばかりを挙げる傾向にあります。

できたこともきちんと記録するように事前に言うのですが、なかなか、難しいようです。しかし、できなかったことだけではなく、できたことを記録していくことは、指導者からのフィードバックをもらえるチャンスが増えるわけですし、何よりも成長している実感となり、学生の実習に対するモチベーション向上につながると考えています。

実務実習では、知識だけではなく総合的な能力(コミュニケーション、問題解決能力、倫理観など)が求められます。ですから、学生が自己評価が正しくできている場合は少なく、指導者からのフィードバックがとても重要です。