2012/02/14

【模擬患者】2日目:マッシー先生のワークショップ

2日目は、岡山SP研究会の模擬患者さん2名をお呼びして、がちんこ医療面接です。

私も実は、ちょっと緊張していました。なぜなら、今回、ちゃんとしたシナリオを用意しようということになり、久しぶりにシナリオライターとしてシナリオを書いてみました。

で、用意したシナリオは以下の2つです。

 

患者① 森田 則男(もりた のりお) 42歳 男性

<問診票からの情報>

主病名:糖尿病

既往歴:気管支喘息、アトピー性皮膚炎(幼少時)

現在の処方内容:アマリール、ジャヌビア、メトグルコ (用法用量は不明)

検査値:HbA1c 11.2%

 

冴えないコンビニ店長の森田さん。42歳独身、コンビニでは深夜のシフトが多くて菓子パンやお惣菜ばかり・・・いかにも糖尿病になりそうなシチュエーションです。

内服薬での治療を始めたものの、インスリンでの治療はいやだ、飲み薬で何とかならないのかと総合診療内科へ受診する患者という設定です。

 

患者② 野々山 美也子(ののやま みやこ) 33歳 女性

<問診票からの情報>

主訴:不眠症

既往歴:なし

現在の処方内容:マイスリー10mg 1錠 寝る前

眠れないという患者です。主訴はシンプルですが、複雑な家庭環境に育ち、死んだと聞かされていた母親が突然現れて、自分の生活がかき乱されているそんな設定にしました。

さて、実際のセッションがどうなったかというと・・・

 

患者① 森田 則男(もりた のりお) 42歳 男性

最初は、学生さんとのロールプレイです。我らがOCSIA副代表のクロディ登場。マッシー先生は、学生とSPさんとのロールプレイの間は、席を外してもらいます。

薬学部の学生ながら、OCSIAで培ったお手本のような医療面接を繰り広げます。あとで、学生が目指すべきところはこれだろうというフィードバックもありました。

確かに、患者さんの話は聞いているし、重要なところは押さえている。でも、患者さんは、インスリンをするのがなぜ嫌なのか話してくれません。結局、時間切れで終了してしまいました。

さて、マッシー先生登場です。面接の入りのところから、引きつけられました。笑顔で患者さんを見つめて沈黙する。その入り方に、すでに森田さんはたじたじな様子が伝わってきました。

インスリンがなぜ嫌なのか、これは、本来は、”地雷”なのですが、そこをつかんでぐいぐいそっちへ持っていく、でも、適度な距離感を保ちつつ、自分が話の主導権を握りながら、患者さんから話をしてもらうように持っていきます。

結局、インスリンが嫌な理由は、注射することがいやだからではなくて、身近な人がインスリンをしていてその人のことが嫌いで、そうはなりたくないなあという気持ちが奥底にあることがわかりました。

最終的には、もともとのかかりつけ医に内服では治療できないのかを聞く、関係を再構築することを約束して面接は終了しました。

実は、1症例目の医療面接とフィードバックが終わるまでで、2時間弱経過していました。ふー、ロールプレイをみているのって実は集中力使うので疲れるんですよね。お腹いっぱい・・・

患者② 野々山 美也子(ののやま みやこ) 33歳 女性

続けて、2症例目。同じように、マッシー先生の前に、学生とのセッションですが、アニキと呼ばれて登場したのは、医学部4年生です。OSCEもこれから、本格的な医療面接は初めてという状況でした。

それでも、彼の医療面接はすごかった。何がすごかったって、患者さんの反応にひるまなかった。あせりやどうしようかという気持ちも伝わってきましたが、それでも、最後までやり遂げて話をまとめるところまで行きました。

もちろん、初めてなので、いろいろな課題は見つかったと思いますが、最後に”また来てください”と患者さんに伝えたときの真剣さは、野々山さんへ伝わっていたようです。

眠れない野々山さんは、家庭の事情が複雑で、あまり周辺情報に触れられたくありません。さて、マッシー先生がどうでたか・・・

不眠には理由がある、その理由の多くは身近な人間関係なことが多い、何が原因なのか思い出して話してくれたら、眠れるお薬を出してあげることができる、あなたに助けてほしいと、何度も繰り返されました。

またしても、ピンポイントに患者さんが持っている問題の核心をぐっと捉えて放しません。

泣きそうになった野々山さんが発した言葉は、お母さんが夜中に家に出入りする、家庭が複雑でというキーワードだけでした。

そこまで出ると、じゃあ、2日分だけ薬だすから、2日の間に話にくいことをまとめてきてくれないかと約束して医療面接終了。終わったあとの余韻は、1つのドラマを見終わったような感覚でした。

フィードバック

2つの症例ともに、フィードバックで問題になったのは、実際の診療でどこまでできるのか、ここまで核心に迫っていいものなのか、決め打ちでいいのか(学生は鑑別疾患をしっかり挙げるようにいわれているが)というものでした。

実は、私もマッシー先生の医療面接を最初にみたときは、違和感がありました。私にも決めつけてかかっているように見えたのです。しかし、2回、3回と回数を重ねると、目にも見えない早さでいろんなことを測って判断しているのだということがわかってきました。

これは、学生にとっては、こんなの無理と思ってしまうんですよね。F1サーキットでの走りを見せてしまうとご自身でも言われたように、マッシー先生のデモンストレーションは、仮免許で路上を走り始めたばかりの人にF1サーキットを走れと言っているようなものです。初心者には、リスクが大きすぎます。

それでも、たとえ、学生がこんなの実際には無理と思ったとしても、私がうまくいったなあと思ったことがあります。学生とのロールプレイとマッシー先生のロールプレイを比べて、患者背景を引き出しているかどうかではなくて、言語と非言語の部分が非常に明確な違いとして出ていました。

学生にとっては、何を質問するか、どういう質問するか、そちらにばかり、目がいきがちですが、実際に患者さんに出会うということは、言語だけではなくて(頭で考えるだけではなくて)、非言語の重要性(気持ちの動き)を感じて欲しかったと思っています。

そういう意味では、学生とのロールプレイを比べると一目瞭然でした。医学教育では語られることのない暗黙知をあえて体現化して言語化する。そのすごさを目の当たりにしました。

いろいろと感じるところもあり、本当に勉強になりました。

マッシー先生の最後のあいさつで、2005年に初めて模擬患者と出会って医療面接をした。そのとき以来、病み付きになって挑戦し続けている。成長している自分を感じることができる場だとコメントされました。

どんなに偉くなっても、経験を積もうとも、挑戦して自分が成長していることを実感することができる、すばらしいメッセージを残して帰っていかれました。

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