2012/02/02

【模擬患者】模擬患者のこころえ10か条(後編その2)

ラブチェア - 写真素材
(c) Gonzaressストック写真 PIXTA

中四国SPフォーラムのあとに、模擬患者こころえ10か条を考えてみました。

【模擬患者】模擬患者のこころえ10か条(前編)

【模擬患者】模擬患者のこころえ10か条(後編その1)

そして、続きです。

 

6. こころの動きを捉える

今、自分の感情が動いたかどうかを意識することは少ないのではないでしょうか。なので、こころの動きを捉えるためには意識して訓練する必要があると思います。

私は模擬患者をしてはいませんが、とあるワークショップで薬だけもらってすぐに帰りたいという性感染症の患者の役をしたことがあります。

薬をもらえば治るんだから早いとこ薬ちょうだいという気持ちでロールプレイに臨みました。丁寧に問診されたあとに、性感染症の予防の話がでてきました。頭では再発の重要性はわかっていますが、その患者になりきろうと思って、ロールプレイ中は、どうでもいいという感情しかありませんでした。

そんな中、「実感沸かないですよね。」という医療者役の相手の言葉に「えっ、ヤバいかも。」と思いました。けして、脅してではなく、相手のホンネの言葉だったから反応したのだと思います。

私自身、模擬患者として訓練されているわけではありませんが、こころが動くとはこういうことかと感じた瞬間でした。

性感染症についての知識は自分自身にはあるわけですから、頭で理解するうんぬんではなく、相手とのコミュニケーションの中で、こころを揺さぶられた瞬間だったと思います。

 

7. 感情と事実を分ける

こころの動きを捉えたら、次は、なぜこころ(感情)が動いたのかを客観的に感じ取る必要があります。なぜ、急に悲しい気持ちになったのか、怒られたと感じたのか、相手の表情であったり、ちょっとした仕草であったりする訳です。

薬だけもらってすぐに帰りたいという性感染症の患者の役の例で出したように、「えっ、ヤバいかも。」という感情は、「実感沸かないですよね。」という相手の言葉=事実によって、引き出されたのだと思います。

感情と事実を分けて捉えるという訓練は、模擬患者にしか必要のない特殊なものと思われがちですが、実は日常生活の中でも大いに役に立つ訓練方法のようです。

というのも、岡山SP研究会の多くの模擬患者さんたちが、模擬患者としての活動をはじめて、夫婦関係や周りとの人間関係がよくなったとおっしゃいます。

岡山SP研究会のメンバーは、活動を始めて研究会に馴染んでくると、生き生きとされています。おそらく自分自身を振り返ることで自分を認めることができ、自分らしく日常をすごすことができるようになっているのだと想像しています。

それだけではなく、感情と事実を分けて捉えることによって、今まではやたら腹がたつばかりだった夫に対して、あっ、私はこの一言に「腹がたつんだなあ〜」とちょっと冷静になれるようです。

 

8 . 相手の個性を受け入れる

みんな1人1人違っていて、それでいいと思ったら楽なったという模擬患者さんの話を聞いて思ったことです。

模擬患者のフィードバックのときに、良いところと改善点を同時に指摘するという鉄則があります。このときの良いところというのは、目の前の医療者役(学生)の個性を見出すのが模擬患者の醍醐味なのではないでしょうか。

個性を感じられることができれば、実は良いところは改善点にもなりうるし、改善点は良いところにもなりうると思います。個性は表裏一体なのではないかと密かに思っています。

この段階では、自分自身を認めるという大前提があるのですが、自分を肯定できることができれば、相手の存在も愛おしいものになるのではないでしょうか。

 

9. 気づきを促すフィードバックをする

自分で気づかない限りは他人が何を言っても変わらないということです。

ついつい、模擬患者としてロールプレイをしてフィードバックをすることに慣れてくると、こうしたら良いのでは?ここがあまり感心しなかったと指示的なフィードバックになってしまうことがあるようです。

結局、改善策や答えはその彼ら、彼女ら自身の中にしかないと思います。模擬患者は素直に感じたことを伝える、これしかないんじゃないでしょうか。

 

10. 模擬患者にしかできないフィードバックをする

最後の1つです。ロールプレイで相手の学生や医療者にフィードバックをするときに、模擬患者にしかできないフィードバックがあります。

コミュニケーション学習の場では、周りで観ている観察者、ファシリテーター(多くの場合は教員)からもフィードバックがあります。しかし、それは、あくまでも第三者の意見です。

ロールプレイで1対1にならないとわからないことがあります。周りからみていて、黙りこんで納得していないようにみえていた患者が、実はフィードバックを聞いてみると医療者からの一言が嬉しくて言葉が出なくなったというようなケースをなんどか経験しています。

岡山SP研究会代表の前田さんが得意とするフィードバックです。一般社会では、なかなか生かすことが難しい豊かすぎる感性を持つ前田純子さんですが、模擬患者となるとすばらしくこころの動いた瞬間を捉えて相手のこころに深く染み込むフィードバックをされます。

 

長々と文章ばかりを書いてしまいました。模擬患者って、まだまだ、奥が深いなあと思ったフォーラムでした。

後編が2つに分かれてしまいました。模擬患者について書いていると尽きないので、詳しくは、"よりよき医療コミュニケーションを求めて --模擬患者を通して見えてきたもの--" (前田純子)をご参照ください。


"よりよき医療コミュニケーションを求めて --模擬患者を通して見えてきたもの--" (前田純子)

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